「うちの工場、昔は井戸を使っていたらしいんだけど……」
こういう話、実は珍しくありません。ただ、いざ復活を考えると気になるのは「で、いくらかかるの?」というところですよね。ネットで調べても出てくるのは家庭用の古井戸再生(15万〜30万円程度)の話ばかりで、工場スケールの費用感はほとんど載っていません。
この記事では、私が今まさに静岡で進めている実際の案件をもとに、休眠井戸復活の段階別の費用感と、どこまでやるかの判断の仕方をお話しします。
「水質が悪いから使っていない」井戸は、本当に使えないのか
今回の静岡の工場は、敷地内に昔使っていた井戸がありました。使うのをやめた理由は「水質が悪かったから」。この理由で井戸を眠らせている工場、本当に多いです。
でも、ちょっと待ってください。水質が悪い=井戸が使えない、ではありません。
「飲めない水」でも、使い道はあります。
- 雑用水:トイレ洗浄、床洗浄、散水など。飲まない用途なら水質のハードルは大きく下がります
- 井戸水クーラー:地下水は年間を通して水温が安定しているので、熱源として使えば夏の冷房コストを大きく圧縮できます。水は熱交換に使うだけなので、飲用レベルの水質は不要です
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そこで今回の工場には、「飲み水は狙わず、雑用水と井戸水クーラーに使いませんか?」という提案をしました。ここからは、その提案で実際に示した検討フローを、費用感と一緒にご紹介します。
なお、休眠井戸を復活させる手順そのものの詳しい解説は、こちらの記事にまとめています。
💧 あわせてどうぞ:使わなくなった井戸の復活4ステップ|工場・病院の眠れる水資源
ステップ①:まず今の井戸の状況を確認する(費用:ほぼ無料)
最初にやるべきは、眠っている井戸の現況確認です。チェックするのは主にこの3点。
- 井戸が枯渇していないか:そもそも水があるのか
- ポンプは入ったままか:昔のポンプが井戸内に残っていることがよくあります。残っていれば引き上げが必要かどうかも見ます
- 水位はどれくらいか:水位が深いほど揚水にかかる設備・電気代が変わってきます
この段階は、多くの井戸業者が無料でやってくれます。業者からすれば見積もりの前提を掴む作業なので、まず気軽に呼んでしまって大丈夫です。「調べてもらうだけでお金がかかるのでは」と身構えて放置している担当者の方が多いのですが、ここは実質ノーリスクです。
ステップ②:仮設ポンプを入れて揚水試験(費用:50万円ほど)
水があることが分かったら、次は揚水試験です。仮設ポンプを井戸に入れて実際に水を汲み上げ、次のことを確認します。
- 水量はどれくらい出るか:目的の用途に足りる量が安定して出るか
- 砂が上がってこないか:砂が出る井戸は、そのままポンプを付けると故障の原因になります
- 水位の変動:汲み上げたときに水位がどこまで下がり、どう回復するか
そして揚水試験の最後に採水して水質分析にかけます。ここまでで、費用は私の経験上50万円ほどが目安です(井戸の深さ・口径、試験の規模によって変わります)。
★プロの一捻り:水質分析の採水は「最後」に採る
「水質を調べたいなら最初に汲んだ水でいいのでは?」と思われがちですが、これは逆です。長く眠っていた井戸の中の水は、滞留して錆や濁りを含んだ「よどんだ水」。これを分析しても、その井戸の本当の実力は分かりません。揚水試験でしっかり水を入れ替えたあと、帯水層から新しく供給された水を採ってはじめて、実運用時の水質が見えます。だから採水は揚水試験の最後なんです。
ステップ③④:ポンプ設置と活用(費用:100万円以内〜)
水量・水質の結果が出たら、それに合わせて本設のポンプを設置します。費用は井戸の条件次第ですが、経験上100万円以内に収まるケースが多いです。
その先は水質分析の結果で分かれます。
- そのまま使える水質なら:雑用水配管や井戸水クーラーへ接続して運用開始
- ろ過が必要なら:用途に合わせたろ過装置を追加
ポイントは、用途を「飲まない使い方」に絞っているぶん、ろ過が必要になっても軽い設備で済むことが多いという点です。飲料水化となると水道水質基準への適合が必要で処理設備も重くなりますが、雑用水・熱源利用ならそこまでは要りません。
ひとつだけ注意点を。井戸水の配管を上水道(市水)の配管とつなぐ「クロスコネクション」は水道法で禁止されています。雑用水として使う場合も、必ず市水系統とは完全に分離した配管にしてください。
実際の案件はどう進んでいる?——「②までやってみる」という選び方
この静岡の案件、今どうなっているかというと、お客さんは「まずステップ②の揚水試験までやってみようか」という判断をされています。
私はこれ、非常に合理的な判断だと思っています。このフローの良いところは、段階ごとに「続けるか、やめるか」を判断できることです。
| 段階 | 費用目安 | ここで分かること |
|---|---|---|
| ①現況調査 | ほぼ無料 | 水の有無・水位・ポンプの状態 |
| ②揚水試験+水質分析 | 50万円ほど | 使える水量・水質 |
| ③ポンプ設置 | 100万円以内 | —(本設工事) |
| ④ろ過装置 or 活用設備 | 水質・用途次第 | —(運用開始) |
いきなり数百万円の投資判断を迫られるわけではありません。①はタダ同然、②の50万円で「この井戸に投資する価値があるか」の答えが出る。答えが出てから③以降に進めばいい。50万円で眠っている資産の価値が判定できると考えれば、決して高い調査費ではないはずです。
まとめ
- 「水質が悪くて使っていない」井戸も、雑用水・井戸水クーラーなど飲まない用途なら復活できる可能性がある
- ステップ①の現況調査(水の有無・水位・ポンプの状態)は無料でやってくれる業者が多い
- ステップ②の揚水試験+水質分析は50万円ほど。ここで井戸の実力が分かる
- ステップ③のポンプ設置は100万円以内が目安。ろ過が必要でも雑用水用途なら軽い設備で済むことが多い
- 段階ごとに撤退判断できるので、まず①、次に②までというスモールスタートが可能
敷地に眠っている井戸は、調べてみるまでタダの穴か資産か分かりません。まずは無料の現況調査から始めてみてください。
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