250床規模の病院から相談を受けたとき、担当者のひと言が印象に残っています。「もし井戸が止まったら、病院の水が全部止まってしまう」。設備としては動いているのに、安心して任せられない状態。その感覚は、現場を知る人間なら十分に理解できるものでした。
この記事では、井戸水を主水源とする病院施設で「止まらない水」を実現するために取り組んだことをご紹介します。
止まれない現場だからこそ、バックアップが必要だった
その病院では、井戸水をろ過装置で処理してから受水槽へ送るシステムが稼働していました。設備の構成としては特に問題があるわけではなく、日常的に水が供給されていました。
ただし、井戸という単一の水源に全面依存している状態は、リスクとして見過ごせません。ポンプの故障、水量の低下、水質の急変——どのトラブルが起きても、受水槽への供給が止まる可能性があります。病院は手術・透析・清潔管理など、水を止めることができない用途が多数あります。「今まで大丈夫だった」は、リスクがないことの根拠にはなりません。
市水引き込み+自動補給で「二重化」を実現した
まず取り組んだのは、非常用として市水(上水道)を引き込むことです。
ポイントは、井戸水を主役のままにしておくことです。コストの低い井戸水を通常時は使い続けながら、いざというときだけ市水が補う構成にしました。これにより、運用コストを抑えながらリスクだけを減らすことができます。
あわせて、受水槽に水位監視システムを導入しました。水位が設定値を下回ると自動で市水が補給される仕組みです。担当者が常に水位を確認しなくても、システムが自律的に水を守ってくれる。これが実現したことで、施設管理の精神的な負担もかなり軽減されたとうかがっています。

スケール対策も同時に——軟水装置の追加提案
相談の中で、もうひとつ課題が浮かび上がりました。スケール(水垢・石灰分の固着)への対応に苦慮されていたのです。
井戸水は地域によってカルシウムやマグネシウムの濃度が高く、配管や熱交換器にスケールが付着しやすい場合があります。放置すると、流量の低下や機器の損傷につながります。
今回のシステム更新にあわせて軟水装置を増設し、スケール成分をあらかじめ除去する構成にしました。バックアップ対策とあわせて、水質面からもトラブルの芽を摘む設計です。設備の改修はまとめて行うほうが、長期的なコストと手間の両面で有利です。
12年稼働が証明した、設計の答え
受注から12年が経過した現在も、同院では当社のシステムが稼働し続けています。
この間、井戸が完全に止まるような事態は起きていませんが、水位が下がって市水が自動補給されたケースは実際にありました。バックアップが「お守り」ではなく、実際に機能したということです。
病院という、止水が一切許されない現場で長期稼働を続けていること——それがこの設計の正しさを示していると思っています。
まとめ
- 井戸水の単独依存は、設備が正常でもリスクを抱えている
- 市水を非常用として引き込み、通常は井戸水を使う「二重化」が有効
- 水位監視+自動補給により、人手に頼らない運用が実現できる
- スケール対策など水質面の課題も、システム更新時にまとめて対応するのが合理的
- 設計の良し悪しは、長期稼働という結果で評価される
水源のバックアップや水位管理の仕組みについてご興味のある方は、お気軽にご相談ください。

