熊本地震で被災された皆様に、お見舞い申し上げます。
水処理と井戸掘削を16年やってきました。今できることが、現場でやってきたことを書き残すくらいしかありません。断水している地域の方に向けて、手元の道具でできる応急処置をまとめます。
地震にかぎらず、台風・大雨・水道管の破損で水が止まったときも、やることは同じです。断水したら、まずここを見てもらえれば動けます。
これは応急処置です。
ここに書くのは、トイレ・洗い物・体を拭くといった生活用水を確保する方法です。飲み水は給水車かペットボトルを使ってください。井戸水を口に入れるなら、必ず沸かしてからにしてください。
井戸水が濁ったら、とにかく出す
地震のあと井戸水が濁ったら、水を出しまくってください。 濁った水を先に出し切るのが正解です。
「濁っているから使うな、止めておけ」と言う人がいますが、逆です。止めていても濁りは抜けません。井戸の口元から、とにかく水を出してください。
新しく井戸を掘った直後も、最初は真っ茶色の水が出ます。それを出し続けているうちに、濁りが水と一緒に排水されて、だんだんきれいになっていきます。地震で揺すられた井戸も同じです。地層が動いて舞い上がった砂と濁りが、水と一緒に出ていきます。
出しているうちに透明に戻ってくるようなら、その井戸はまだ生きています。生活用水として使えます。
出しながら見ておきたいこと
- 井戸の口元に地割れがないか — 割れていると、地面の表面の水がそのまま井戸に落ちます
- 地震の前と比べて、水位・臭い・色が変わっていないか — 変わっているなら地層が動いています
- いつまで出しても濁りが引かないか — その井戸は一度業者に見てもらったほうがいい状態です
💧 あわせてどうぞ:大雨の後に井戸水が濁った!原因と対応・飲めるようになるまでの目安
濁った水をろ過する
ペットボトルの底を切って逆さにし、口のほうにタオルや手ぬぐいを詰めてください。そこに濁った水を上から流します。
これだけで、ある程度きれいになります。砂や泥は、かなり取れます。
取れるのは濁りだけです。 目に見えない菌までは取れません。トイレを流す、床を拭く、食器の予洗いをする——そういう用途のための水だと思ってください。
断水中の家に「実は残っている水」
家の中に、まだ水が残っている場所があります。
エコキュート・電気温水器の貯湯タンク
家庭用で370L〜460Lクラスが一般的です。断水していても、このタンクの中身は残っています。本体の下のほうに非常用の取水栓があるので、そこから取れます。
ただし、タンクが傾いていたり脚部が浮いていたら触らないでください。 満水だと400kg以上あります。倒れると危険です。
受水槽のあるマンション・施設
受水槽には水が残っています。管理人さんや管理会社に「受水槽の水を分けてもらえないか」と聞いてみてください。個人で開けるものではないので、必ず管理者を通してください。
それ以外
浴槽の残り湯、トイレのロータンクの中、洗濯機に残っている水。全部、生活用水として使えます。
トイレの流し水がないとき
トイレの蓋を開けると、その奥にカバーがあります。それを開けて、中に水を入れてみてください。1回分ですが、流れます。
ここに入れる水は、濁った水でかまいません。 汚物が流れればいいので、きれいである必要はありません。
※マンション・アパートの場合だけ、最初はバケツ1杯で様子を見てください。階下に影響が出ることがあります。
家の中で水漏れしているとき
まず、メーターボックスの中の元栓(止水栓)を閉めてください。 家全体の水が止まります。漏れている場所を直す前に、これが先です。
そのうえで、漏れている場所にビニールテープを巻きます。引っ張りながら、圧力をかけて、何重にも。 ゆるく巻いても効きません。テープを伸ばしながら、食い込ませるように巻いてください。多少はマシになります。
自己融着テープ(ゴム系の、伸ばして巻くと自分同士でくっつくテープ)が手元にあれば、そちらのほうが断然もちます。ホームセンターが開いていたら、これを探してください。
給湯の配管(お湯側)は熱でテープが負けます。お湯側が漏れているなら、給湯器側で止めるのが先です。
停電で井戸ポンプが止まっている方へ
井戸があっても、ポンプが電気で動いている以上、停電したら水は上がってきません。
発電機を回す場合、注意してほしいのが起動電流です。ポンプは動き出す瞬間に、定格の何倍もの電気を食います。定格ワット数ぴったりの発電機を用意しても、ポンプが起動しません。余裕を持った容量を選んでください。
💧 あわせてどうぞ:停電したら井戸ポンプは止まる|発電機の選び方と事前準備
電気が復旧したときも、いきなり通常運転させないでください。
- 空運転していないか — 水が来ていない状態で回すとポンプが焼けます
- 最初の1分は捨て水 — 地震で舞い上がった砂が濃い状態で出てきます。これを配管に流すと後が面倒です。蛇口を開けて、砂ごと外に出してから使い始めてください
★井戸をお持ちの方へ:ご近所に開放できます
これが一番お伝えしたいことです。
井戸が生きているなら、ご近所に開放してあげてください。 給水車の列に並ばずに済む人が、それだけで何人も出ます。トイレの水、洗い物の水、体を拭く水。生活用水の需要のほうが、実は量としてはるかに大きいんです。
開放するときは、井戸の横に紙を貼ってください。
飲用不可・生活用水です
飲み水には使わないでください
これだけで十分です。「飲めない水を出すのは無責任じゃないか」と気にされる方がいますが、逆です。用途を書いて出すほうが、はるかに人の役に立ちます。
災害時に足りなくなるのは、飲み水よりも生活用水です。1人1日3Lの飲み水は給水車で配れますが、トイレを流す水までは配れません。井戸のある家は、そこを埋められます。
まとめ
- 井戸水が濁ったら、止めずに出し切る。 出しているうちにきれいになる
- ペットボトル+タオルのろ過で、濁りは落とせる。 生活用水として使う
- エコキュート・受水槽・浴槽に、まだ水が残っている
- トイレはロータンクに水を入れれば1回流れる。 濁った水でいい
- 水漏れは元栓を閉めてから、テープを引っ張って何重にも巻く
- 飲み水は給水車かペットボトル。 井戸水を口に入れるなら必ず沸かす
- 井戸が生きているなら、貼り紙をしてご近所に開放してください
水が落ち着いたら、井戸の水質検査を受けてください。地震で地層が動いたあとは、以前と水質が変わっていることがあります。今は生活用水として使い切って、あとで確かめれば大丈夫です。
一日も早く、蛇口から普通に水が出る日が戻ることを願っています。

