井戸水でも下水道代はかかる?家庭と法人の違い・メーター位置のコツ

コスト削減

「井戸を掘れば水道代がゼロになる」——ここまではその通りです。ところが実際に井戸を使いはじめてから「下水道代の請求が来たんだけど、なぜ?」というご相談を、現場でたびたび受けます。

結論から言うと、井戸水を使っていても下水道使用料はかかります。この記事では、なぜかかるのか、家庭と法人で計算方法がどう違うのか、そして法人の方に絶対に知っておいてほしい「メーターをどこに付けるか」でランニングコストが大きく変わる話まで、現場目線で整理します。

井戸水でも下水道代はかかる|理由は「流す先」にある

まず、下水道使用料の基本的な仕組みからいきましょう。

下水道使用料は、上水道メーターを通った水量を「汚水として流した量」とみなして課金されるのが原則です。実際に下水に流れた量を測っているわけではありません。水道メーターの検針票の数字が、そのまま下水道使用料の計算根拠になっています。

ここで「じゃあ井戸水は水道メーターを通らないから対象外では?」と考えたくなりますよね。でも、ちょっと立ち止まってみてください。

井戸水も、台所やトイレ、風呂を通れば、最後は排水管から下水道に流れていきます。使った水がどこから来たかではなく、どこへ流れていくかが課金の根拠です。下水道という公共設備を使っている以上、その分の負担はどうしても発生します。

そのため各自治体は、井戸水についても「汚水排出量の認定」という形で水量を決め、下水道使用料を計算しています。この認定のやり方が、家庭と法人で大きく違うわけです。

【家庭向け】メーターがない家は「世帯人数」で決まる

一般のご家庭の井戸には、水量メーターが付いていないことがほとんどです。そこで多くの自治体は、世帯人数から使用水量を推定する「人数認定」という方式を採っています。いわば定額課金です。

この基準、自治体ごとに驚くほどバラバラです。実際の例を並べてみます。

自治体 井戸水のみの場合 水道と併用の場合
北九州市 1世帯3人まで月10㎥、1人増すごとに3㎥加算 一般家庭は水道使用水量のみ
宇都宮市 1人あたり月7.0㎥ 1人あたり月3.5㎥+水道使用量
千葉市 1人まで月10㎥、1人増すごとに5㎥加算 水道使用量に1人月3㎥を加算
福井市 人数に応じた認定水量 認定水量から水道使用量の1/2を差し引く
山口市 定住人数で設定された水量 人数認定と水道使用量の多い方を採用
※各自治体の公表内容をもとに整理(2026年9月時点)。最新の基準は必ずお住まいの上下水道局でご確認ください。

同じ4人家族でも、自治体が違えば認定水量は倍近く変わります。「隣の市の友人より下水道代が高い気がする」というのは、気のせいではないかもしれません。

そしてもう一つ大事なのが、世帯人数が変わったら届出が必要という点です。子どもが独立した、家族が増えたといったタイミングで申告しないと、実態と合わない水量で請求され続けます。しかも多くの自治体では遡っての修正ができません。人数が減ったのに黙っていると、ずっと払いすぎることになります。

下水道代がかからないパターンもある

井戸水を使っていて下水道使用料が発生しないケースもあります。それは、そもそも下水道に流していない場合です。

具体的には、下水道が整備されていない地域で、ご自宅に浄化槽を設置しているパターン。この場合、生活排水は浄化槽で処理されてから側溝や水路へ放流されます。公共下水道を通っていないので、下水道使用料という概念自体がありません(代わりに浄化槽の維持管理費と法定検査費がかかります)。

ただし、ここは誤解しやすいポイントなので念を押しておきます。下水道が整備されている区域では、この方法は選べません。下水道法では処理区域内の建物は公共下水道へ接続する義務が定められており、「下水道代がもったいないから汚水を雨水側に流そう」というのは明確な違反です。散水や洗車に使った水が地面に浸透する分は別として、生活排水の放流先を勝手に変えることはできません。

【法人向け】ろ過設備を入れたらメーター設置が前提

工場・病院・施設などで井戸水を本格的に使う場合、話は変わります。

ろ過装置や除鉄除マンガン装置を導入するような規模になると、多くの自治体では私設メーター(量水器)の設置を指示されるか、行政から貸与されます。人数認定のような大雑把なやり方ではなく、実測で汚水排出量を認定する方式です。

つまり、流した分だけきっちり課金されるということ。家庭のような「人数割りだからまあこんなもの」という曖昧さはありません。

このとき注意が必要なのは、メーターには計量法上の要件があることです。有効期限(一般に8年)のある検定済みの計量器を使う必要があり、期限が切れれば交換しなければなりません。また、設置・変更・廃止のたびに届出が求められます。「付けたら終わり」ではなく、更新まで含めた管理が必要になります。

なお、実測で認定された汚水量そのものを、申請によって減らせる制度(減量認定)もあります。冷却・散水など「下水道に流していない水」を差し引いてもらう仕組みで、条件が合えば効果は大きいです。詳しくはこちらでまとめています。

あわせてどうぞ:下水道料金の減量認定とは?申請の流れと失敗しない5つのポイント

★プロの一捻り:下水道メーターは「ろ過の後」に付けてもらう

ここからが本題です。16年この仕事をやってきて、メーターの設置位置ほど「知っているかどうか」で差が出るポイントはないと断言できます。

下水道使用料は「単価 × 水量」です。単価は自治体が決めるので動かせません。動かせるのは水量だけ。そして水量は、メーターをどこに付けるかで決まってしまうのです。

井戸の口元に付けると何が起きるか

一番やってはいけないのが、井戸の口元(揚水した直後)にメーターを設置することです。

井戸から汲み上げた水は、そのまま全部が施設で使われるわけではありません。途中でろ過装置を通り、そこで逆洗(ぎゃくせん)という工程が入ります。ろ材に溜まった鉄分や濁質を洗い流す作業で、この洗浄に使った水は受水槽には入らず、そのまま排出されます。

井戸の口元にメーターがあると、この逆洗水まで「汲み上げた水量」としてカウントされます。施設で使ってもいない水が、下水道使用料の課金対象になってしまうわけです。

そこで、メーターはろ過装置を通った後——つまり受水槽に入る手前に付けてもらうのが鉄則です。こうすれば、実際に施設で使われて下水に流れる水だけが計量されます。

逆洗水の行き先もセットで整理しておく

ただし、ここは正直にお伝えしておきます。メーターをろ過後に移しただけで自動的に逆洗水が対象外になるわけではありません。逆洗水そのものを下水道に流している場合は、自治体から「その分も計量してください」と言われるのが自然な流れです。

効いてくるのは、逆洗排水を雨水側や別経路で処理できるケース。つまりメーター位置と排水経路は、セットで設計・協議する必要があります。逆洗排水をどこに流せるかは地域によって判断が分かれるので、ろ過装置の逆洗排水、どこに流す?で詳しく整理しています。

井戸の水質次第で損失は100万円規模になる

「そんなに変わるものか」と思われるかもしれませんが、これが変わるんです。

逆洗の水量は、井戸の水質に大きく左右されます。鉄やマンガンが多い井戸ほど、ろ材がすぐ詰まるので逆洗の頻度も水量も増えます。1日あたり数㎥で済む現場もあれば、10㎥を超える現場もある。

仮に逆洗水量を1日10㎥、年間300日の稼働、事業所向けの下水道使用料単価を300円/㎥として計算すると——

10㎥ × 300日 × 300円 = 年間90万円

これが「施設で使ってもいない水」に対する支払いです。単価も稼働日数も現場によって上振れしますから、条件次第では年間100万円を超える損失も現実的にあり得ます。しかもこれが毎年続く。メーターの位置という、たった一点の判断で、です。

設置位置は自治体との協議で決まる

最後に、これが一番大事な話かもしれません。

メーターの設置位置は、こちらが勝手に決められるものではなく、自治体との協議で決まります。そして自治体ごとに、通る話と通らない話がはっきり違います。ある市であっさり認められた設計が、隣の市では突き返される。そんなことが普通に起こります。

だからこそ、事前の協議が勝負どころです。ろ過フローの図面を用意して「この水は受水槽に入らず、施設では使用しません」と根拠を示せるかどうか。ここを詰めずに工事を進めてしまうと、後から位置を変えるのは大工事になります。

新規に井戸を導入する計画があるなら、メーター位置の協議は必ず設計段階のタスクに入れてください。配管が埋まってから気づくのが、一番もったいないパターンです。

まとめ

  • 下水道使用料は「上水道メーターを通った量=汚水量」とみなして課金されるのが原則
  • 井戸水も家や施設を通って下水に流れるので、当然ながら下水道使用料はかかる
  • 一般家庭はメーターがないことが多く、世帯人数による認定が主流。基準は自治体ごとに大きく違い、人数が変わったら届出が必要
  • 下水道代がかからないのは、下水道未整備地域で浄化槽を使っている場合。下水道区域内で汚水を雨水側へ流すのは下水道法違反
  • 法人はろ過設備の規模になると私設メーターによる実測認定が基本
  • ★メーターは井戸の口元ではなくろ過装置の後に。逆洗水まで課金対象になると、条件次第で年間100万円規模の損失になる
  • 設置位置は自治体との協議次第。設計段階で必ず詰めること

井戸は「掘って終わり」ではなく、そのあと何十年と付き合う設備です。導入時のちょっとした判断が、ランニングコストとしてずっと効いてきます。

下水道料金は、メーター位置のほかにも削減の着眼点があります。全体像はこちら:下水道料金、年間で数百万払っていませんか?削減できる3つの着眼点


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