検査結果でPFOS・PFOAが基準値(50ng/L)を超えてしまった――そんなとき、まず何から検討すればいいのか。除去技術にはいくつか選択肢がありますが、現場の規模や原水の性状によって最適解が変わります。この記事では、中規模施設(専用水道・小規模浄水場)の管理者向けに、3つの除去技術の比較と、わずかな超過なら使える「部分処理(ブレンド方式)」によるコスト最適化の考え方まで解説します。
PFOS・PFOA除去の3技術【概要】
PFOS・PFOAの除去技術として、現場で使われているのは主に次の3つです。
- 活性炭ろ過(粒状活性炭・GAC)
- イオン交換樹脂
- RO膜(逆浸透膜)
どれを選ぶかは、処理水量の規模で大きく変わります。
| 規模 | 主流の技術 |
|---|---|
| 大規模(浄水場・工業排水) | 粒状活性炭塔、RO膜 |
| 中規模(専用水道・施設) | 粒状活性炭、イオン交換樹脂塔 |
| 小規模(家庭・個人井戸) | 活性炭カートリッジ、家庭用RO |
この記事では、中規模施設を中心に、それぞれの技術の特徴・コスト・選び方を整理していきます。
活性炭ろ過(粒状活性炭・GAC)
仕組み
PFOS・PFOAは疎水性(水になじみにくい性質)を持つため、活性炭の細かい孔に物理的に吸着されます。粒状活性炭(GAC:Granular Activated Carbon)を充填した塔に水を通すだけのシンプルな構造で、もっとも歴史と実績がある方式です。
除去率と特徴
- 除去率:90%以上(条件次第で検出限界以下まで)
- PFOS/PFOAには高い吸着力
- 短鎖PFAS(PFBS、PFHxAなど)には効きにくい
メリット
- 国内外で導入実績が豊富で、設計ノウハウが確立している
- 既存のろ過設備に追加しやすい
- 初期コストは3技術の中で比較的低め
デメリット・注意点
活性炭は便利ですが、運用面で押さえておくべき点があります。
ひとつは有機物の影響。原水中に有機物(フミン質など)が多いと、活性炭はそれらも一緒に吸着してしまうため、PFOS・PFOAの吸着容量が早く埋まってしまいます。地表水に比べると地下水(井戸水)は有機物が少なめなので、活性炭との相性は比較的良好です。
もうひとつは使用済み活性炭の処分。PFASを吸着した活性炭は、適切に処理しないとPFAS汚染源になります。再生焼却(高温で熱処理してPFASを分解)する設備が国内ではまだ限られているため、処分ルートを事前に確認しておく必要があります。
こんな現場に向いている
- 地下水・井戸水を水源にしている
- PFOS・PFOAが汚染の中心(短鎖PFASは少ない)
- 初期コストを抑えたい
- 処理水量が中規模
イオン交換樹脂
仕組み
PFOS・PFOAは水中で負に帯電(陰イオン)しているため、陰イオン交換樹脂で選択的に吸着できます。とくに近年は、PFAS除去に特化した選択型樹脂(ピュロライト社のPurofine PFA694Eなど)が市販されており、活性炭の数倍の吸着容量を持つものもあります。
除去率と特徴
- 除去率:選択型樹脂なら検出限界以下まで可能
- 活性炭より長寿命(交換頻度が少なくて済む)
- 短鎖PFASにも一定の効果
メリット
- 活性炭に比べて吸着容量が大きく、運用が長持ち
- PFAS用の選択型樹脂が選べる
- 高い除去率を安定して確保しやすい
デメリット・注意点
- 初期コスト(樹脂代)が活性炭より高い
- 共存する硫酸イオン・硝酸イオンなどの影響で吸着性能が落ちることがある
- 使用済み樹脂の処分も活性炭同様に課題
こんな現場に向いている
- 高い除去率を長期にわたって維持したい
- PFAS全般(短鎖含む)への対応も視野に入れたい
- 交換頻度を減らして運用負担を軽くしたい
RO膜(逆浸透膜)
仕組み
水を高圧で半透膜に通し、PFASを物理的にブロックする方式です。家庭用浄水器でもおなじみの技術ですが、施設用ではより大型のRO膜モジュールが使われます。
除去率と特徴
- PFOS:99%以上
- PFOA:92〜97%
- 短鎖PFASも含めてPFAS全般に有効
- PFAS以外の溶解性物質もまとめて除去
メリット
- 除去率は3技術の中で最高レベル
- PFAS全般に対応できる
- 水質全体の改善にもつながる
デメリット・注意点
中規模施設にとって一番の悩みどころは、濃縮水(リジェクト水)の処理です。RO膜は原水を「透過水(処理済み)」と「濃縮水(PFASが濃縮された排水)」に分けるため、濃縮水の排水方法・処理方法を別途検討する必要があります。
そのほか、
- 動力コスト(高圧ポンプの電気代)が高い
- 初期投資・メンテナンスコストが大きい
- 中規模施設には過剰スペックになりやすい
こんな現場に向いている
- 超過レベルが高い(基準値の数倍以上)
- 短鎖PFASも含めて広く除去したい
- 水質全体の高度処理が必要
中規模施設向け|3技術の比較表
中規模施設で検討するときの比較を表にまとめました。
| 項目 | 活性炭ろ過 | イオン交換樹脂 | RO膜 |
|---|---|---|---|
| 除去率(PFOS/PFOA) | 90%以上 | 検出限界以下も可 | 95%以上 |
| 短鎖PFASへの効果 | 弱い | 中〜高 | 高い |
| 初期コスト | 低 | 中 | 高 |
| ランニングコスト | 中 | 中 | 高 |
| 設置スペース | 中 | 中 | 大 |
| 動力コスト | 低 | 低 | 高 |
| 濃縮排水の問題 | なし | なし | あり |
| 向いてるケース | 地下水中心、PFOS/PFOA主体 | 長期運用、高除去率 | 高濃度、PFAS全般 |
迷ったら、まずは活性炭ろ過から検討するのが現場感覚としては一般的です。実績が多く、設計・施工・運用のノウハウが確立しているからです。除去率や運用コストでさらに踏み込みたい場合に、イオン交換樹脂やRO膜を検討する流れになります。

【現場ノウハウ】わずかな超過なら「部分処理(ブレンド方式)」でコストを下げる
ここが今回いちばん伝えたいポイントです。
検査結果が基準値をわずかに超えた程度――たとえば60ng/Lくらいで止まっている場合、原水の全量を活性炭で処理する必要は実はありません。原水の一部だけを処理して、残りの未処理水とブレンドすることで、基準値をクリアしながらランニングコストを大幅に抑えられます。

計算例:原水60ng/L → 目標50ng/L以下にする場合
仮に原水が60ng/L、活性炭処理後は0ng/Lまで落とせると想定して計算してみます。
- 原水の30%を活性炭で処理 → 処理後濃度 0ng/L
- 残り70%は未処理 → 60ng/Lのまま
- 混合後の濃度 = 0 × 0.3 + 60 × 0.7 = 42ng/L
→ 基準値50ng/Lを下回り、クリアできます。
つまり、処理する水量を3割に絞れば基準を満たせるということです。活性炭の使用量・交換頻度がそのまま下がるので、ランニングコストへのインパクトは大きいです。
メリット
- 活性炭の使用量・交換頻度が大幅減
- 動力コスト(ポンプ電力)も処理量に比例して減る
- 既存の処理設備をそのまま小規模で導入できるケースもある
注意点
ただし、この方式を採用するときは次の点をしっかり押さえておく必要があります。
① 原水濃度の変動を把握する
地下水のPFOS・PFOA濃度は、降雨後・季節・周辺の汚染源の状況で変動します。「いつもは60ng/Lだけど、雨のあと90ng/Lまで上がる」といったケースでは、平常時の設計だと簡単に基準を超えてしまいます。過去の検査データから最大値・変動幅を把握しておくことが前提です。
② 目標値は基準より厳しめに設定する
50ng/Lぴったりを狙う設計はリスクが高すぎます。目標を40ng/Lなど余裕を見て設定して、変動が起きても基準内に収まる設計にしておくのが現場の鉄則です。
③ 活性炭の破過時期を見越して管理する
活性炭は時間とともに吸着能力が落ちます(破過)。処理水だけでなく処理後濃度の定期監視を組み合わせて、破過の兆候を早めにつかむ運用が必要です。
④ 許可・届出の確認
専用水道や水道事業の場合、処理方式の変更には保健所や水道担当課への届出・確認が必要なケースがあります。設計を固める前に所管に相談しておくのが安全です。
対策を決めるときの判断ポイント
最後に、3技術+ブレンド方式のどれを選ぶかを判断する材料を整理しておきます。
- 超過レベル:基準のすぐ上(〜70ng/L程度)か、数倍超過か
- 原水のPFAS組成:PFOS/PFOA中心か、短鎖PFASも含むか
- 処理水量:1日何㎥処理する必要があるか
- 予算:初期投資を抑えたいか、ランニングを抑えたいか
- 長期コスト:使用済み吸着材の処分まで含めて考える
ざっくりした判断の流れとしては、
- わずかな超過+地下水+PFOS/PFOA中心 → 活性炭+ブレンド方式が第一候補
- 長期運用+高除去率重視 → イオン交換樹脂
- 高濃度超過+PFAS全般対応 → RO膜
という順で検討するのが現場感覚に合います。
まとめ
PFOS・PFOA超過時の対策を整理すると、
- 中規模施設では活性炭ろ過・イオン交換樹脂・RO膜の3つが選択肢
- まずは実績の多い活性炭ろ過から検討するのが基本
- イオン交換樹脂は長期運用・高除去率に強み、RO膜は高濃度・PFAS全般に強み
- わずかな超過なら部分処理(ブレンド方式)でランニングコストを大きく抑えられる
- ただしブレンド方式は原水濃度の変動把握・余裕を見た設計・破過管理が前提
「うちの場合どの方式が現実的か」を判断するには、原水の検査データ(PFOS・PFOA・PFHxSなど)と処理水量、現状の設備状況をセットで検討する必要があります。迷ったら、水処理の実績がある業者や登録水質検査機関に早めに相談するのがおすすめです。
参考資料
- 環境省「PFOS、PFOA以外のPFASに係る国際動向」
- WHO飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書(厚生労働省水道課仮訳)
- 環境省「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」(令和7年6月30日公布)
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