「水質検査でPFOSが基準値を超えてしまった。これって、どう対応すればいいんだろう?」——最近、こういったご相談が増えています。とくに2026年4月からPFOS・PFOAは正式な水質基準になりましたので、井戸や専用水道を管理されている方にとっては他人事ではありません。この記事では、基準超過がわかったときに何から手をつければいいのか、そして除去の決め手になる活性炭の選び方まで、現場目線で整理してお伝えします。
2026年4月から、PFOS・PFOAは「守るべき基準」になった
まず押さえておきたいのが、ルールが変わったという事実です。
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、いわゆるPFAS(有機フッ素化合物)の代表選手です。水も油もはじく便利な性質から、撥水加工や泡消火剤などに幅広く使われてきました。ところが、自然界ではほとんど分解されず体内に蓄積しやすいことから「永遠の化学物質」とも呼ばれ、規制が進んでいます。
これまで日本では、PFOSとPFOAの合計値で「50ng/L以下」という値が暫定目標値として運用されてきました。ng(ナノグラム)は10億分の1グラムという、ごく微量を表す単位です。50ng/Lを別の単位に直すと0.05µg/L、0.00005mg/Lと同じ値で、とても細かい数字を扱っていることがわかります。
そして2025年6月の改正で、この50ng/Lが暫定目標値から正式な水質基準へと格上げされ、2026年4月1日に施行されました。これにより、水道事業者だけでなく、簡易水道や専用水道の設置者にも、定期的な水質検査と基準の遵守が義務として課されています。検査の頻度は、おおむね3か月に1回以上が基本です。
つまり、これまで「目標」だったものが「守らなければならないライン」に変わったということです。井戸水や自家水源で専用水道を運用している施設では、この4月以降、より重い責任が生じていると考えておいてください。
なぜ兵庫の山間部で高い値が出るのか — 産廃と撥水加工
今回ご相談いただいたのは兵庫県のケースでした。実は兵庫県の山間部では、PFASが高めに出やすい事情があります。
理由のひとつが、産業廃棄物の最終処分場が多いことです。産廃処分場をつくる際、雨水や汚水を遮断するためにフッ素系の撥水加工を施すことがあります。このフッ素分が、長い時間をかけて浸出水として下流へ流れ出し、河川や地下水のPFAS濃度を押し上げてしまうのです。山あいの処分場の下流で「とんでもない数字」が出る、というのは現場で実際に起きていることです。
象徴的なのが明石川流域です。環境省が2019年度に実施した調査では、明石川でPFOSとPFOAの合計が105〜146ng/Lという、基準の2〜3倍にあたる高い値が報告されました。汚染源としては周辺の産業廃棄物最終処分場が浮上しており、処分場の排水でPFOA・PFOSが検出され、活性炭の交換頻度を月1回まで増やしても日によって基準を超えてしまう、という報道もあります。
明石川を水源とする明石市の浄水場では、活性炭処理の強化や、雨で水量が多くPFAS濃度が薄まる時期をねらった取水、地下水との混合といった低減対策を続けてきました。その結果、給水末端の値は数ng/L〜10ng/L程度まで抑えられています。さらに市は、取水源そのものを見直す方針を打ち出しており、令和7年度から阪神水道企業団からの受水で明石川からの取水量を大幅に減らし、令和10年度中には明石川からの取水を完全に廃止する計画を示しています。
ここからわかるのは、PFAS対策には大きく分けて「取水源を変える」か「除去する」かの二択がある、ということです。
基準を超えてしまったら、まず何をするか
では、自分の施設で基準超過がわかったとき、具体的に何から動けばいいのでしょうか。順を追って整理します。
下のフローチャートに全体の流れをまとめましたので、あわせてご覧ください。

① まず再検査で数値を確認する
1回の検査結果だけで慌てる必要はありません。採水時のミスや一時的な変動ということもあります。まずは落ち着いて再測定し、本当に超えているのかを確かめます。
② 取水源・汚染経路を確認する
本当に超過しているなら、次は原因です。上流に産廃処分場や工場がないか、雨のあとに濃度が跳ね上がっていないかなど、発生源と流入経路を確認します。明石川のケースのように、上流の処分場が影響していることは珍しくありません。
③ 取水源を切り替えられるか判断する
もし別の水源に切り替えたり、水道水を受水して希釈したりできるなら、それが最もシンプルな解決策です。明石市が取水縮小・廃止へ向かったのも、この発想です。ただ、井戸が一本しかない、近くに代替水源がないといった現場では、なかなかそうもいきません。
④ 切替が難しければ、除去設備を検討する
取水源を変えられない場合は、水から直接PFASを取り除くしかありません。ここで主役になるのが活性炭です。
この「除去」のステップが、井戸や専用水道では現実的な選択肢になることが多いので、次の章で詳しく見ていきます。
除去の本命は活性炭 — ヤシガラ系より石炭系
PFOS・PFOAの除去で、現場でいちばん頼りになるのが活性炭処理です。明石市の浄水場でも活性炭の交換頻度を増やすことで濃度を下げた実績があり、効果は実証済みといっていいでしょう。
活性炭ならどれでもいいわけではない
ここで現場の経験から強くお伝えしたいのが、活性炭は「石炭系」を選んだほうがいいということです。
活性炭にはいくつか原料があり、よく使われるのがヤシガラ(椰子殻)系と石炭系です。ヤシガラ系は細かい孔(ミクロ孔)が多く、小さな分子の吸着や脱臭には強いのですが、PFOS・PFOAのような比較的大きな分子の除去では、石炭系のほうが有利に働く場面が多いというのが実感です。石炭系は適度に大きな孔も持っているため、PFASをしっかりつかまえてくれます。
「とりあえず活性炭を入れたのに、思ったほど数値が下がらない」というとき、原料の選定が合っていないケースが意外とあります。PFAS対策で活性炭を導入するなら、まず石炭系を軸に検討してみてください。
交換のタイミング(破過)も計画に入れる
活性炭は無限に吸着し続けられるわけではなく、いずれ吸着しきれなくなって素通り(破過)してしまいます。破過したまま使い続けると、除去できているつもりで基準を超えてしまうことになりかねません。
ですから、活性炭を入れたら終わりではなく、定期検査で数値の推移を記録し、破過する前に交換できるよう計画しておくことが大切です。基準は3か月に1回の検査が基本ですので、その結果を交換時期の判断材料に使うとよいでしょう。
「燃やして消す」のは産廃側の話、しかも高額
ちなみに、PFOSそのものを分解して消滅させようとすると、1800℃級の非常に高い温度で焼却する必要があります。これは産業廃棄物としてPFOSを処理する側の話で、設備も燃料も特殊になるため費用は高額になります。
裏を返せば、下流で水を使う私たちの側は「分解」ではなく「除去」、つまり活性炭でPFASを水から取り除いて対応するのが現実的だ、ということです。発生源対策は時間もコストもかかりますので、まずは目の前の水を安全にする除去設備から手をつけるのが、多くの現場での落としどころになります。
まとめ
PFOSが基準値を超えてしまったときの対応を整理します。
- 2026年4月から、PFOS・PFOA合計50ng/Lは正式な水質基準になり、専用水道の設置者にも検査と遵守の義務がある(おおむね3か月に1回の検査)
- 兵庫の山間部では、産廃処分場の撥水加工に由来するフッ素が下流のPFAS濃度を押し上げており、明石川流域はその代表例
- 超過がわかったら、まず再検査 → 取水源・原因の確認 → 取水源の切替が可能か判断、の順に動く
- 切替が難しければ活性炭による除去設備を検討。活性炭はヤシガラ系より石炭系がPFAS除去に有利
- 活性炭は破過するため、定期検査で数値を追い、交換時期を計画しておく
PFASの問題は原因究明に時間がかかることが多く、「待っていれば下がる」とは限りません。基準を超えてしまったら、まずは現状の水質と取水源を正しく把握することが第一歩です。除去設備の規模や活性炭の選定はケースバイケースですので、判断に迷ったらお早めにご相談ください。現場の状況に合わせて、現実的な対策を一緒に考えます。
あわせてどうぞ:PFOS・PFOAの検査方法や処理の選択肢について解説した記事もあります。

